青森県八戸市の中心市街地を再生させ、まちに賑わいを取り戻す契機となることを目指して計画された地域観光交流施設である。
われわれは、実際の八戸に踏み出す入口となるポータルサイトのような存在=ポータルミュージアムを提案し、平成18年度に行われた簡易公募型プロポーザルにて設計者として選出され、ものづくり・まちづくりの観点から、八戸に存在する人、物、食、情報などのさまざまな魅力を発見し、新たな企画として発信する拠点としての創造的市民施設とすることを基本理念として計画が進められた。

八戸はその寒冷な気候からか、建物内の通り抜けを含む街区内の通り抜け路地が非常に発達しており、この路地がまちの構造や体験に奥行きを与えている。この構造を継承し、建築をまちのようにめぐる回遊式のミュージアムととらえ、さらに歩いて自ら楽しみを発見していくという体験が建築からまちへと連続していくことでまちに賑わいを波及させていくことを考えた。

建築の中心に外気に開放された5層吹抜けの光庭を設け、その周りを観光展示や市民活動のためのオープンスペースとした。光庭は上部に行くほど徐々に広がった形状をしており、建築の奥まで自然光を取り込むことができるとともに、光庭を通して他の階の様子が垣間見れるように計画されている。1〜4階まではこのオープンスペースの東側に上り、西側に下りのエスカレータを設けた吹抜けを配置することで、立体的にも回遊動線をつなげている。
また、重要無形民俗文化財に指定されている三社大祭の山車を展示することを求められたことから、国道に面して3層吹抜けのスペースを設けた。山車の展示は常時行われるわけではなく、加えて八戸は寒冷で外部のオープンスペースを活用できる季節が短いことから、待合や各種イベントに活用できるまちなかの広場とすることを意図している。
これらの吹抜けがシークエンスに変化を与え、まちをめぐるような体験を生み出している。
5階には、本施設で行われるプロジェクトを進行するための拠点として、中〜長期滞在しながら活動できるレジデンススタジオを配置した。5階は回遊動線から一端切り離すことで、まちのなかの隠れ家のような、滞在するゲストや活動に参加する利用者のベースとして適度な距離感を持たせている。

夏季の日射抑制やメンテナンスに考慮し、各階にバルコニーをはね出し、有孔折板と壁面緑化によるスクリーンを設ける構成とした。植栽が風になびき、親しみのある姿となることを意図した。

オープンからちょうど一ヵ月後の3月11日、東日本大震災が発生した。八戸でも津波他の被害が発生したが、本施設においては免震構造を採用していたためほとんど被害は発生せず、非常用自家発電機を設置していたため、地震後帰宅できなくなった出張者や観光客などの避難所として活用された。

1 月 2011
カテゴリー: 公共建築
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Shoichi Hariu