スタジオリビングのある住まい
敷地は仙台市から15km南東にある海よりの、のどかな田園地帯に位置し、竹林、ケヤキ、クリなどからなる屋敷林が敷地の西側と北側を囲んでいる。住居は南面させるため東西に延ばし、スタジオは展示用の壁を大きく取れるように延ばした。雨水や雪の処理については、軒樋を設けず、屋根をすべて南に対し1/10の勾配を持つ片流れとし、雨受けは砂利敷きに暗渠管を設けて排水することで対処した。スタジオの片流れの屋根南部は、入り口のゲートを兼ね、住居の前面まで延伸させたことで居室を領域化している。また、それに覆われたウッドデッキは屋外パーティーやステージ空間としての役割をもたせた。居室に関しては、母の寝室より、専用のトイレ・洗面・浴室・台所・玄関へ続く裏動線は、外構のアプローチも含めて段差を無くし要所に手摺を付け、吹き抜けの居室は片流れ方向に平行の垂木構造とし、南側の開口部は冬至・夏至の太陽高度のシミュレーションをしたうえで上部に木製ルーバーを設けている。

事務所の内部空間は必要最低限の間仕切りの留め、設計室などのワーキングスペースは全体が見渡せる一つの大きな吹き抜け空間としている。東側の壁にそってリニアに並ぶスタッフの領域には1ユニットごとに縦長のスリット窓を設け、外の風景と共に通風、採光の機能を持たせている。また、架構材やウッドデッキを含めて木材はすべて宮城県北部の登米森林組合からの葉枯らしの杉材を設けている。建具を伴わない独立の柱は、磨き丸太も削り丸太も嫌って,細い構造用鋼管を用いている。冬季に関してはエネルギーコストの安価な石油焚き温水ボイラーを熱源とし、温水利用の輻射床暖房を行う計画とした。これにより吹き抜け部の上部温度差を無くし、頭寒足熱の快適な温熱環境を獲得している。また、床暖房にはシンダー埋設方式を採用している。熱容量の大きいコンクリートを放熱体とすることにより、暖房を必要とするシーズン中は床が冷え切ることが無く、床全体が温まるむらのない暖房を実現している。

1 月 1999
カテゴリー: 住宅
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Shoichi Hariu