丸森町の商店街の中心部にある屋敷が、町に手つかずのままそっくり寄贈された。この屋敷は東北でも名のしれた豪商であったが、40年間店を閉ざしていた。私は見学に行った時、偶然ではあったが町からこの屋敷の活用についての相談を受け、このプロジェクトに関わった。さまざまな専門家とチームを構成し、建物群の実測とおびただしい調度品の調査を開始した。この結果に基づいて、この屋敷の活用方針を次のように提案した。

1. 町の歴史を後世に伝えるため、郷土資料館として整備する。
2. 商店街の活性化や町並みの景観整備につなげる。
3. 町の観光ネットワークの拠点としての役割を持たせる。

本計画は様々な専門家とのコラボレーション、さらに町民の参加したワークショップの下で進められた。修復は地元の大工、石工等も参加し、往時の形態や素材、さらに構法を原則として用いた。ほぼボランティアに近い形で計画に当たったが、多くの点で得るところがあった。とくに、設計は運動論としてとらえるべきであることが理解できたのは大きな収穫と言える。

5 月 1988
カテゴリー: 公共建築
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Shoichi Hariu