名取市斎場は閖上漁港に位置し、潮騒が聞こえる海と際(きわ)に計画された。敷地周辺の一体は、住宅地区とマリーナ地区の接点にある自然公園として位置づけられる。そのため、これまでにないような新しい葬祭空間が求められ、平成5年の指名コンペを経て設計および建設が進められた。

1.風景としての葬祭空間
古代の墳墓のようになだらかな丘を新しく構成し、その中に建築や外構を嵌め込んでいく。また周辺の風景を取り込んだ配置計画とする。

2.パブリックとプライバシー
葬祭空間は、公的な施設ではあるが、遺族にとっては静粛なプライバシーが必要とされる。そこで、異なる会葬者同士の交錯を避けるため、内部動線を一方通行とする。

3.緊張と弛緩 1つの別れを暗示する徴(しるし)
いわゆる結界としての池と曲面の透きの壁を設定した。そして中池を渡り、待合棟へ続く通路(光のコリドール)を鉄骨とガラスで構成し、緊張と弛緩の緩衝空間として捉えた

4.光と陰の空間 一般的には、圧迫感を感じたり空間が重くなりがちであるが、光の取り入れ方を工夫して参列者の誘導と対流を促す。

5.風と土の空間
海風と陸風によって、1日の中でも風向きが変わるため、丘の樹林は「いぐね」として考えた。建築および外構のテクスチュアを、死んで土に還るという自然の流れに沿うように捉えた。

蔵王連邦に沈む夕陽の照り返しがこの斎場をオレンジ色に染め、あたかも死者の旅立ちを示唆するかのような情景を意図した。

4 月 1995
カテゴリー: 公共建築
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Shoichi Hariu